生産者とのストーリー

デンカラムとガルテンビのはじまり

ガルテンビが取り扱うエチオピア生豆は、エチオピア南西部・カッファ地方の生産者、デンカラムが育てたコーヒーです。

カッファは、コーヒー発祥の地のひとつとも言われる地域。
豊かな森に囲まれたこの土地で、デンカラムは長年コーヒーづくりを続けています。

ガルテンビがデンカラムのコーヒーを輸入し始めたのは、2017年のことです。

最初は、右も左も分からない状態でした。
「エチオピアのコーヒー豆を直接輸入したい」
そう思い立ち、僕は単身でエチオピアのカッファへ向かいました。

現地でまず行ったのは、コーヒー生産者を探すことでした。

知り合いもほとんどいない中で、街の人たちに
「良いコーヒー生産者を知っていますか?」
と聞いてまわりました。

すると、何人もの人から同じ名前が出てきました。

それが、デンカラムでした。

すぐに彼の精製所を訪ねると、デンカラムは突然訪ねてきた僕を快く迎え入れてくれました。
そして、まず最初に言われたのが、

「とりあえずコーヒーを飲もう」

という言葉でした。

エチオピア式の淹れ方で振る舞ってくれたそのコーヒーは、今でも忘れられないほど印象的でした。

当時の僕は、今ほどコーヒーに詳しかったわけではありません。
細かい評価ができたわけでもありません。

それでも、ただひとつ分かったことがあります。

今まで飲んできたコーヒーとは、まったく違う。

その感覚が、デンカラムとの取引の始まりでした。


世界へ出ていなかった、デンカラムのコーヒー

当時、デンカラムの精製所には、グレード2までのコーヒーしかありませんでした。

ただ、僕が目指していたのは、
「高品質なものを、適正な価格で届けること」でした。

そこでデンカラムと話し合い、グレード1の品質を目指して、選別や精製の改善に取り組んでもらうことになりました。

その過程で分かったのは、デンカラムのコーヒーが、それまで彼自身の名前でエチオピア国外へ輸出されたことがなかったということです。

公的機関に持ち込まれ、他のコーヒーと混ぜられて輸出されるか。
もしくは、国内で流通するか。

それまでの販路は、そのどちらかでした。

2017年12月。
ガルテンビは、デンカラムの名前で初めて国外に出るコーヒーを輸入することになりました。

僕たちにとっても、デンカラムにとっても、初めての貿易でした。


最初に届いた、予想外の生豆

最初に注文したのは、Natural製法の生豆500kgでした。

ところが、実際に日本へ届いたのは、なんとWashed製法の生豆でした。

国が発行した証明書にはNaturalと書かれていたため、最初は本当に混乱しました。

ただ、届いたWashedを焙煎して飲んでみると、とても美味しかったのです。

もともとWashedを輸入する予定はありませんでした。
でも、この出来事がきっかけで、ガルテンビではNaturalとWashedの2種類を継続して取り扱うようになりました。

もし最初から予定通りNaturalが届いていたら、今でもWashedの取り扱いはなかったかもしれません。

そう考えると、この偶然も、今につながる大切な出来事だったと思っています。


小さな苗から見てきたコーヒー

2025/26年に収穫されたクロップでは、デンカラムから合計約8トンの生豆を輸入しました。

ラインナップは、Natural、Washed、Red Honey、Anaerobic Natural、Community Lotの5種類です。

そのうち、Community Lotを除く4種類は、デンカラムが苗の段階から管理してきたコーヒーです。

ガルテンビでは、その木がまだ小さな苗だった頃の姿も見てきました。

その苗が少しずつ育ち、実をつけ、収穫され、精製され、ついに日本へ届きました。

今回の生豆は、ただその年に仕入れたコーヒーというよりも、数年前から少しずつ育ってきたものが、ようやく形になったロットです。

ただ生豆を仕入れるだけではなく、長い時間をかけて関係を築きながら届いた生豆。

そこに、デンカラムのコーヒーの大きな価値があると思っています。


毎年、少しずつ良くしていく

デンカラムとの取引は、ただ同じコーヒーを毎年買い続けるだけではありません。

どうすればもっと品質が良くなるのか。
どうすればデンカラムにとっても、ガルテンビにとっても、飲んでくださる方にとっても良い取引になるのか。

そういったことを、毎年話し合いながら続けています。

今年は、これまでのNaturalとWashedに加えて、新しい挑戦も行いました。

Red HoneyとAnaerobic Naturalは、ガルテンビがデンカラムに依頼してつくってもらった、完全受注生産の特別なロットです。

「今年はこんな精製に挑戦してみたい」
「もっとこうしたら品質が上がるのではないか」

そんなやり取りを重ねながら、少しずつ形にしてきました。

長く取引を続けているからこそ、お願いできることがあります。
そして、毎年一緒に改善していけることがあります。

デンカラムのコーヒーは、そうした積み重ねの中で生まれています。


デンカラムの味わい

デンカラムのコーヒーは、派手な香りで分かりやすく主張するタイプのエチオピアではありません。

いわゆる「エチオピアらしい華やかさ」を強く求める方には、少し穏やかに感じるかもしれません。

けれど、飲み進めるほどに感じる旨味があります。
奥行きのある甘さがあります。
毎日飲んでも飽きにくい、落ち着いた深さがあります。

Naturalには、ナチュラル製法ならではの果実感がありながら、香りだけに頼らない厚みがあります。

Washedには、透明感のある味わいと、すっきりとしたコクがあります。
飲み口は軽やかですが、味わいは浅くありません。

派手さではなく、旨味。
強い個性ではなく、飲み続けたくなる深さ。

それが、ガルテンビが感じているデンカラムのコーヒーの魅力です。


輸送時の品質にも気を配っています

良い生豆をつくることと同じくらい、その品質を良い状態で日本まで届けることも大切です。

生豆は麻袋に入って届きますが、その内側にはグレインプロという厚手のポリ袋を使用しています。

グレインプロは、生豆の風味を守るための袋です。
ただし、輸送時に雑に扱われると破れてしまうことがあります。

そのため今回は、デンカラムとも事前に話し合い、輸送時の扱いにもできる限り気を配ってもらいました。

良い生豆をつくること。
そして、その品質をできるだけ良い状態で日本まで届けること。

そこまで含めて、ガルテンビでは大切にしています。


良き友人であり、楽しい取引先

デンカラムは、ただの取引先ではありません。

良き友人であり、毎年一緒にコーヒーづくりを良くしていく大切なパートナーです。

日本からデンカラムに連絡するときは、英語を話せる彼の息子を介してやり取りをしています。

これまでに彼の家へ招いてもらい、家族みんなで食事をしたこともあります。
ちなみに、デンカラムの奥さんがつくるインジェラは本当に絶品です。

また、2025年12月には中国で、デンカラムと息子のアドナイと一緒に食事をしました。

今回の輸入について話し合ったり、これからのことを相談したり。
でも、それだけではなく、他愛もない話をしながら、ただ楽しい時間を過ごしました。

コーヒーの取引ではありますが、ガルテンビにとっては、ただ商品を仕入れて販売するだけの関係ではありません。

現地に行き、顔を合わせ、食事をして、話し合い、毎年少しずつ品質を良くしていく。

そうして届いたデンカラムの生豆を、今年も日本でご紹介できることを嬉しく思っています。